心と体は分けられない -心身一如という考え方と鍼灸-
「検査では異常がないと言われたけれど、つらさは確かにある」鍼灸院には、そんな言葉と共に来院される方が少なくありません。
痛み、だるさ、息苦しさ、眠れなさ。その背景をたどると、体の問題だけでなく、心の状態が深く関わっていることがあります。
東洋医学では、こうした状態を「心身一如」という言葉で表します。心と体は別々のものではなく、ひとつのものとして常に影響し合っている、という考え方です。
心が疲れると、体に何が起きるのか
強いストレスを感じたとき、肩が凝ったり、お腹の調子が悪くなったりした経験はありませんか?逆に体調が悪い日が続くと、気分まで落ち込んでしまうこともあります。
これは特別なことではありません。心と体は、神経・ホルモン・血流などを通して、常に情報をやり取りしているからです。
東洋医学では、イライラや不安→気の巡りが滞る、緊張が続く→呼吸が浅くなる、心配事が多い→胃腸の働きが落ちるといった形で、心の状態が体の反応として現れると考えます。
鍼灸は「症状」だけを見ていない
鍼灸というと、「肩こりにはこのツボ」「腰痛にはここ」といったイメージを持たれがちです。もちろん、それも間違いでなく効果があることもあります。
ただ、伝統的な鍼灸では「なぜこの症状が出ているのか」「この人の体は、どんなサインを出しているのか」をとても大切にします。
脈、呼吸、姿勢、皮膚の緊張。そして何気ない会話の中に出てくる生活背景や心の状態。これらを総合して、その人全体を整えていくのが鍼灸です。
体に触れることで、心がゆるむこともある
鍼灸を受けたあと、「気づいたら呼吸が深くなっていた」「理由はわからないけど、気持ちが軽い」と話される方がいます。
これは鍼やお灸が自律神経に穏やかに働きかけることで、体の緊張がほどけ、その結果として心も落ち着くためです。
無理に前向きにならなくてもいい。何かを頑張って変えようとしなくていい。体が少し楽になるだけで、心の余裕が生まれることがあります。
「治す」よりも「整える」という選択
心身一如の視点で見ると不調は敵ではなく、体と心からのメッセージとも言えます。無理が続いていないか、休む時間が足りているか、自分の感覚を置き去りにしていないか。
鍼灸は、そのメッセージに静かに耳を傾け、心と体のバランスをもとの位置に戻すお手伝いをします。
強い刺激で無理に変えるのではなく、今の状態に合わせて、少しずつ変えていく。
それが心身一如を大切にする鍼灸の考え方です。
心と体、どちらか一方だけでは足りない
不調を抱えたとき、「気のせい」「歳のせい」と片付けてしまうの前に、心と体をひとつのものとして見直してみてください。
鍼灸は、症状だけでなく、あなた自身を診る医療です。
言葉にできない違和感や、説明しきれないつらさがあるとき、心身一如という視点が、回復へのヒントになるかもしれません。